相続手続きで最初に立ちはだかる「被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍集め」。以前は全国の役所へ何箇所も郵送請求が必要でしたが、令和6年(2024年)3月1日から始まった「戸籍の広域交付制度」により、最寄りの市区町村窓口一か所でまとめて取得できるようになりました。
この記事では、新制度のメリットだけでなく、「そもそもなぜ昔は一か所で取れなかったのか?」「昭和22年の家制度廃止との関係とは?」といった背景まで、法律の知識がない方にもわかりやすく解説します。
そもそもなぜ「出生から死亡まで」の戸籍が必要なの?
理由:隠れた相続人がいないか「100%の証明」が必要だから
普段私たちが目にする戸籍(現在の戸籍)には、今その家族に誰がいるかという「現在の情報」しか載っていません。
しかし、預貯金の解約や不動産の名義変更などの相続手続きでは、「亡くなった方に、自分たち以外の相続人(前妻との子、養子、認知した子など)が本当に一人もいないか」を法律上証明する必要があります。そのため、誕生した瞬間から亡くなる瞬間までの履歴を1本の鎖のようにつなげて確認しなければならないのです。
なぜ昔は「最寄りの役所一か所」で集められなかったのか?
従来のルールでは、戸籍は「その戸籍が置かれている本籍地の市区町村」でしか発行できないという原則がありました。一人の人間が一生のうちに置く本籍地は、人生の節目で何度も変わることが珍しくありません。
理由①:結婚や引っ越しによる転籍で本籍地が移動するから
結婚して新しく本籍を立てたり、家を建てたタイミングで本籍地を別の市区町村に移したり(転籍)すると、新しい場所でゼロから戸籍が作られます。
過去の情報は古い役所に残されたままになるため、本籍地を移動した回数だけ、それぞれの役所に請求する必要がありました。
理由②:「家制度」の廃止と法律改正で戸籍が作り直されたから
日本の戸籍制度は、歴史の中で何度か大きく作り直されています。最大の転換期が1947年(昭和22年)の「家制度」の廃止です。
- 昭和22年以前(旧民法・家制度時代):
「戸主(家の長)」を中心として、戸主の父母・子・子の嫁・孫・甥姪など、親族がひとつの戸籍に何世代も一緒に記載されていました(家単位の戸籍)。そして家制度時代は戸主死亡による家督相続、戸主の隠居、親族の分家などといった理由で割と頻繁に戸籍が作り替えられていた時代でした。 - 昭和22年以降(現行民法):
家制度が廃止され、現在の「一組の夫婦とその未婚の子」という単位で戸籍を作り直すことになりました。
✅実際に各自治体で家制度の戸籍から現行制度の戸籍に作り直されたのは、昭和30年代後半になりますので、昭和30年代より前に生まれた方は古い家制度の戸籍も必要になります。
理由③:戸籍のコンピュータ化によって戸籍が作り直されたから
平成6(1994)年の法務省令による改正により戸籍がコンピュータ化され、それに伴い各自治体で戸籍も作り直されました。練馬区でも平成13年1月1日に戸籍が作り直されています。(戸籍のコンピュータ化により、従来のB4サイズ縦書きからA4サイズ横書きに変わりました)
このような理由で何回か戸籍が作り直されたため、昔の家族関係を調べるには
- 転籍前の戸籍
- 婚姻前の戸籍
- 法律改正によって作り直される前の戸籍
をそれぞれの本籍地からわざわざ取り寄せる必要があったのです。
令和6年3月スタート!「戸籍の広域交付」で何が変わった?
全国データの一本化で「最寄りの役所窓口」だけで完結!
令和6年3月1日からは、全国の市区町村の戸籍データが国のネットワークで一本化されました。
これにより、自分が住んでいる一番近い役所の窓口に行き、本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)を提示するだけで、全国各地に散らばっていた亡くなった方の過去の戸籍を、その場でまとめて請求・取得できるようになりました。
例えば亡くなった方が
- 最後の本籍地は杉並区
- 転籍前の本籍地は文京区
- 婚姻前の本籍地は埼玉県新座市
- 家制度時代の戸籍は群馬県高崎市
と本籍地が複数の市区町村にあるケースでも、相続人様の最寄りの役所(例えば練馬区役所)で全ての戸籍の取得が可能です!
戸籍の広域交付を利用するときに知っておきたい注意点
便利な制度ですが、利用にあたってはいくつかの条件や注意点があります。
注意点①:窓口に行ける人に制限がある(代理人や郵送請求は不可)
広域交付を利用できるのは、原則として亡くなった方の配偶者、親・祖父母(直系尊属)、子・孫(直系卑属)などに限られ、かつ役所の窓口へ出向く必要があります。
司法書士などの専門家による代理請求や、郵送での請求には対応していないため、専門家による代理請求や郵送請求をしたい場合は従来通り各本籍地へ個別に請求することになります。
注意点②:発行に時間がかかる場合がある
生まれてから亡くなるまでの大量の戸籍をさかのぼって確認・プリントアウトするため、役所の窓口での発行に時間がかかったり、即日交付は原則不可で、申請→受け取りと二回行く必要がある自治体も多くあります。まず役所へ出向く前に戸籍担当の窓口に電話をして、発行までにかかる時間を確認することをお勧めします。
まとめ:相続が起きたら、まずは最寄りの役所へ(司法書士報酬の節約にも!)
かつては「家」を単位とし、何度も書き換えられて全国の役所に保管されていた日本の戸籍。
「戸籍の広域交付」のスタートによって、時代をさかのぼる面倒な取り寄せ作業から解放され、相続手続きの最初のハードルが大きく下がりました。
相続が発生した際は、まず最寄りの役所窓口で「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を広域交付でまとめて発行して欲しい」と相談してみるのが一番の近道です。
✅ご自分で被相続人の出生から死亡までの戸籍の取得をしていただければ、司法書士に依頼する場合の司法書士報酬の節約にもつながります!(ちなみに当事務所で被相続人の出生から死亡までの戸籍の取得を代行した場合、2万円かかりますので、2万円の節約になります)
練馬区では、戸籍の広域交付を行っているのは練馬区役所の本庁舎か石神井庁舎のみなのでご注意ください。(区民事務所では行っておりません)
参考:練馬区役所の戸籍の広域交付の案内サイト

営業時間
